著者 : 池井戸 潤
ミステリ作家の太郎は、父の生まれ故郷であるハヤブサ地区にやって来た。東京の生活では出会えない、自然豊かな風景に惹かれたからだ。この地区での付き合いのため、消防団に入る。ハヤブサ地区は、原因不明の火事に見舞われていた。太郎も仲間と共に、火消しに奮闘する。
ハヤブサ地区の住民は,太陽光パネル設置会社に土地の買収を提案されていた。やむにやまれず土地を売却した人もいた。その人は火事の被害にあっていた。火事と土地売却の関連に太郎は気づき、ハヤブサ地区で起きている不穏な事実に向き合い始める。
物語が進むにつれて、人間関係が複雑に絡み合っていく。果たして信頼のおける人物は誰なのか,秘密を隠し持ってる人はいないのか,実は火災の放火犯なのではないだろうか。それぞれの疑問が、物語に引き込む力を持っている。それに合わせて、カルト教団を扱っている点は、著者の時代の流れを読む力を感じさせる。
田舎町の地域消防団から、地区の存続をかけた戦いへ。太郎は自分の目で見たものを信じて向かっていく。その勇気は、読後の心にしっかりと残ってくれる。